塚本謙一の歴史講座01【古墳】

古墳の定義と種類

 古墳とは、一般的に古墳時代に造られた墓を指す名称である。その定義は難しく、学界でも諸説が唱えられている。一般には、盛り土を施したいわゆる墳丘をもっていること、死者を手厚く葬るための副葬品や棺をもち、それらを保護する石室などの施設を備えている古代の墓などとされる。地域によっては低い盛り土をもち、多少の副葬品を伴う弥生時代後期の墓もあるが、これらは古墳時代に移行する段階の墳墓である。また、古墳時代の墓が、すべて古墳の定義を満たしているわけでない。一般庶民の墓は、弥生時代と同様に土に穴を掘って遺体を埋める、墳丘のない土壙(こう)墓が大部分で、これは古墳とは呼ばない。小高い墳丘をもち、一見して古墳と判定し得るような墓は、当時の支配階級や有力な農民層だけが築き得たものである。古墳は、その形から円墳・前方後円墳前方後方墳・方墳・上円下方墳・帆立て貝式古墳などに分けられる。最も普通に見られるのは、こんもりとゆるやかに土を盛った円墳である。また、古墳時代の始めから、中心的な墳墓として築造されたのが前方後円墳前方後方墳である。前方後円墳は、円墳の前面に祭壇を設けるための方形部を付設したものとされる。古い時期のものは、前方部が低く細長いのが特徴である。新しいものでは、前方部の先端が大きく広がり、高さも後円部と変わらなくなる。次に述べる埋葬施設は後円部にあるのが普通であるが、前方部に見られる場合もある。